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朱戸アオのつめあわせ

漫画家朱戸アオの公式ブログです。

朱戸のどおでもいい一日。

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テーマ:日記 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2009/11/30(月) 21:33:00|
  2. 現実ぎみな日記

朱戸はこんなかんじの奴ですが、「九段坂下クロニクル」をよろしくお願いいたします。

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  1. 2009/11/29(日) 12:19:00|
  2. 告知

九段坂下クロニクルについての覚え書き/後半

九段坂下クロニクルについての覚え書き/後半」 (前半よりつづく)

 こうして時空を移動するという設定もページ数も削らなければいけなくなった私は、結局「探偵」「探偵助手」「泥棒」のお三方にご退場いただくこととなりました。では誰が主人公になったのかというと「探偵事務所に依頼に来た依頼人」です。私は提出した3本の「想ひ出盗人」のネームのなかに3人の依頼人を登場させていました。3人はそれぞれ「現在」「戦中」「昭和初期」の記憶を盗まれていました。他の方々の漫画と時代がかぶらない方がいいということで、そのなかの「戦中」の記憶の持ち主、幸子さんに主人公になっていただくことになりました。

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九段坂下クロニクル「此処へ」より。幸子、殿村、速水、次郎、九段下の景色、錦鯉。

 正直に告白すると、戦中の話を描く事が決まったときは嫌だなあと思いました。絵柄が地味だし、つらいし、もんぺをはいた女子はいまいちかわいくないし、こんなことを言ったらしかられるし、そもそもたいして詳しくもない私なんかが描いたら物知りな方々につっこまれまくるのでは、と考えたのです。しかしビビって描かずに聖域にしてしまうよりはツッコまれながらも描いた方がずっと価値があるだろうと思い直しました。

 ともかくまずは知る事だと思い戦争体験記を随分読みました。そうすると、いままで私が持っていた戦中のイメージは固定観念にとらわれすぎていたということがわかってきました。考えてみればあたりまえだったのですが、人々の体験は大変バラエティーにとんでいたのです。自作の鉱石ラジオでこっそり米軍のラジオのジャズを聞いている人もいれば、特攻隊の基地でお茶を点てる人もいる。おはぎやワッフルを食べている人もいれば、お米をチケット代わりにベートーベンやモーツァルト(ドイツの音楽なので敵性音楽ではない)をひいている人もいる。ちなみに当時の女性の多くも、もんぺはやだなあと思っていたみたいです。
 そして私にとっていちばんの驚きは玉音放送でした。しばしば戦争体験記では、何の説明もなくいきなり玉音放送を聞いたため内容をさっぱり理解できず(そもそも声の主が誰かもわからず)、その後にあったNHKのアナウンサーの解説で初めて日本が戦争に負けたことが理解できた。というような記述が出てきます。だったらそのNHKのアナウンサーの解説を聞いてみたい。という事で、ネットでそれをさがして聞いてびっくり。和田信賢アナウンサーの声は私がよく知っているNHKのアナウンサーの方々の声と驚くほど似ていたのです。放送局ごとにアナウンサーの声は特徴がありますが、ここまで完璧に代々受け継いできたものだったとは。しかも聞き取りやすいだけでなく内容もわかりやすい。1945年が急に近くなった瞬間でした。

 というわけで、色々な人がいたわけですし、はるか昔の話でもないのだから考えすぎないぞ、とひらきなおった私は、幸子という主人公に好き勝手にやらせることにしました。
 幸子は戦争中にもかかわらず個人の幸せを求める女性です。個人の幸福と国家、社会、家族等の公共性との兼ね合いは現代において明快な答えのない複雑な問題です。もし幸子が現代にいたとしてもある種の批判はまぬがれないでしょう。そんな彼女が戦中にいる、つまり個人の幸福と国家、社会、家族等の公共性との兼ね合いに明快な答えがあたえられている時代に彼女を生かす、この事がこの物語の最も大きな魅力であり困難でした。しかし彼女はほっておいても好き勝手やってくれました。
 巻末の植田実先生のビルについての解説にもある通り、九段坂下の例のビルは関東大震災後に復興の一環として計画され、太平洋戦争を生抜きました。運命をすべて自分で切り開いてきたと思っている幸子がビルとともに叶わない運命に取り残されたとき、彼女はどうするのか。
 そもそものネームの「想ひ出盗人」に出てきた幸子は幸せを求めつづけたために最後まで幸せにはなれませんでした。しかし「此処へ」の中の幸子には可能性があたえられています。
 最後の数ページの台詞が決まったとき、私は彼女が可能性をつかんだことに気づきました。今はただ「現在だろうが過去だろうがあたしは幸せになるのよ。」と騒ぎだしそうな彼女に敬服するのみです。
  1. 2009/11/28(土) 18:28:00|
  2. 長文

九段坂下クロニクルについての覚え書き/前半

 2009年11月30日に「九段坂下クロニクル一色登希彦元町夏央・朱戸アオ・大瑛ユキオ共著)」が小学館より発売されます。実在する築80年以上のビルを舞台にしたオムニバスコミックスです。私、朱戸はこの中の「此処へ」という戦中、戦後にかけてのこのビルを舞台にしたの漫画をかいています。
 このオムニバスコミックスは、そもそもの発端から発売まで2年以上の月日がたっています。その間に「此処へ」にも紆余曲折がありました。漫画は本来結果のみであるべきで、過程を述べる事が出来るのはものすごく偉い人だけの特権だと知ってはいますが、なにせ共著であっても初単行本です。ちょっと書いてみてもいいでしょうか?そういえばブログはテキスト打ちとかしたほうがインタネットのアーキテクチャ的にいいっすよ、と賢い方々も本で言っていましたし。

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月刊IKKIのイキマン単行本描きおろし部門投稿時原稿

「九段坂下クロニクルについての覚え書き/前半」

 そもそもの発端は、と書こうとして、昔の手帳を掘りだしてみたり電池の膨らんだ古い携帯を充電してメールをコツコツ見たりしたのですが無駄でした。ともかく2007年の春から夏前にかけて、「九段坂下クロニクル」の企画がもちあがりました。月刊IKKIのイキマン単行本描きおろし部門の第一回応募に漫画家数人でオムニバスコミックを投稿しよう、というワンダフルな計画を私の師匠である一色登希彦先生が思いついたのです。九段坂下のビルを共通の舞台にするということだけが縛りのめちゃくちゃ楽しそうなアンソロジー本の企画でした。九段坂下の例のビルにお邪魔したこともあり、大学時代にこっそり建築を専攻していた私は「築80年以上のビルを舞台にしたオムニバスコミック」という設定に知恵熱が出たような気がするくらいもりあがりました。

 そのとき私が思いついたネタは二つ。一つは現代、九段坂下のビルに立てこもった銀行強盗と警視庁特殊急襲部隊(SAT)との対決もので、SATが突入経路を検討しているとだんだんとビルの構造や時間とともに起こった変化などが分かる、というもの。もう一つは、ビルが建ったのが昭和初期なので、なんとなく江戸川乱歩的な帝都東京を舞台にした話、という大雑把なアイディアでした。この二つのネタを一色登希彦先生に話したところ、江戸川乱歩的な帝都東京を舞台にした話、という大雑把な方を推される事となりました。
 江戸川乱歩は小学生のころ少年探偵団シリーズを随分読みましたが、これを機会にと久しぶりな少年探偵団からちょっとぶりの芋虫まで楽しく乱読しました。煉瓦塀にかこまれた薄暗い洋館や裏通りのカフェーには妄想スイッチを入れる何かがあります。そしてなんといっても、しょっちゅう何かをズバっと言い当てる明智探偵や、やたら女装が似合う小林探偵助手、きっと手間ひまかかったたであろう変なメカや変装とともにあらわれる怪人二十面相は最強の物語エンジンです。やはり「探偵」「探偵助手」「泥棒」にご登場いただこう。しかも九段坂下のあのビルにはにそれらが似合うだろう、と私は妄想しました。

 こうしてイキマン単行本描きおろし部門に投稿した「想ひ出盗人」のネームが出来上がりました。九段坂下のビルを舞台に時空を行き来して「想い出」を盗む泥棒と、それを取り戻そうとする探偵と探偵助手の話です。泥棒が盗む「想い出」は九段坂下のビルにかかわるものばかりです。その「想い出」を盗まれると、人は九段坂下のビルへの愛情を失ってしまいます。現実(ハード)と記憶(ソフト)の永遠性とのかかわりをテーマに、ビルという場所を固定し話ごとに違う時代に飛んで時間的に話を広げるというコンセプトのネームでした。

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「想ひ出盗人」のラフ

   投稿の結果、他の方々のネームが素晴らしかったこともあり、すぐにとはいかないものの編集者さんと共にネームを直し本にしていこうということになりました。しかしここでたくさんの問題が主に私のネームまわりに発生しました。まず私のネームは妄想が暴走しすぎたため、最終的に30P×3話、つまりトータルで90Pになっていました。しかし普通の単行本はだいたい200Pほど、4人でアンソロジー本を出すとすると200÷4で1人50Pとなります。明らかに一番ペーペーな私のページ数だけ他の方より多い。しかも、4人の描いた漫画の時代がばらけさせることによって、私が1人でやろうとしていた「ビルという場所を固定し話ごとに違う時代に飛んで時間的に話を広げるというコンセプト」を本それ自体が持つという企画になったのです。

 こうして私のネームは、キャラクター名等の乱歩ネタだけを残し、投稿時とは全く違う形へと変身することとなりました。 (後半につづく)

  1. 2009/11/27(金) 18:12:00|
  2. 長文

必殺、目を細める攻撃。

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テーマ:猫のいる生活 - ジャンル:ペット

  1. 2009/11/26(木) 15:26:00|
  2. 現実ぎみな日記
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